#494【ジャズを流す上品なバー】国境の南、太陽の西  村上春樹 講談社文庫 1995年


国境の南、太陽の西 (講談社文庫)
講談社
村上 春樹

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「村上さんのところ」を読んで、改めて村上春樹の本を読んでいる。

第二弾は「国境の南、太陽の西」。

国境の南とは、主人公が小さい時に聞いていたジャズの題名。
具体的には、アメリカの国境の南ということで、メキシコをさす。

太陽の西とは、ヒステリア・シベリアナという病気のことで、シベリアの荒野で農夫が毎日畑を耕しているが、北も東も南も西も地平線。
ある日、農夫の何かがぷつんと切れて、太陽が沈む西に向けて、取り憑かれたように西に向けて歩き続け、そのまま倒れて死ぬこと。

主人公の生き方は、幸福ではあるが、ある日突然、太陽の西へ向かって行こうとする、というような話。

村上春樹が昔ジャズバーを経営していたことと関係していると思うが、主人公もジャズバーを経営している。

それがうまくいき、家族と幸福に暮らしている。

この物語では、特に仕事や生き方に関する言葉のいくつかにグッと来た。

⑴ 店の経営
僕は仕入れの交渉をし、人手を確保し、帳簿をつけ、すべての物事が円滑に運ぶように気を配った。
様々なアイデアを思いついて、すぐにそれを実行した。
(中略)
僕はゼロから何かを作り上げたり、その作り上げたものを時間をかけて丁寧に改良したりする作業を愛した。
そこは僕の店であり、僕の世界であった。


⑵ システム
成功するためには幸運だって必要だし、頭だって良くなくちゃならない。
それは当然だ。
でもそれだけじゃ足りないんだ。
まず資金が必要だ。
十分な資金がなければ何もできやしない。
しかしそれよりももっと必要なのは、やり方を知ることなんだよ。
やり方を知らなければ、他の全部が揃っていたって、まずどこにも行けない。


⑶ 恰好
店の経営者というものは、自分の店の客にできればこういう恰好をしてきてほしいと望む恰好を自分でもしているべきなのだ。
僕がそうすることによって、客の方にも従業員の方にも、それなりの緊張感のようなものが生まれるのだ。


⑷ 店のイメージ
もし自分が客だったら、誰とどんな店に行って、どんなものを飲んだり食べたりしたいと思うだろう。
もし僕が二十代の独身の男で、好きな女の子を連れていくんだったら、どういう店に行くだろう。
そういう状況をひとつひとつ細かいところまで想像していくんだ。
予算はどれくらいなのか。
どこに住んでいて、何時頃までに帰らなくてはならないのか。
そういう具体的なケースをいくつも考える。
そういう考えをかさねていくくうに、店のイメージがだんだん明確なかたちをとっていくんだ。


⑸ 変化
店には落ちつくべき時期と、変化するべき時期とがある。
それは人間と同じなのだ。
どんなものでも同じ環境がいつまでも続くと、エネルギーが徐々に低下してくる。
そろそろ何かしらの変化が求められていると僕は少し前にからうすうす感じていた。



Amazonの内容紹介はこの通り。
今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は力の及ぶかぎりその作業を続けていかなくてはならないだろう――たぶん。
「ジャズを流す上品なバー」を経営する、絵に描いたように幸せな僕の前にかつて好きだった女性が現われて――。
日常に潜む不安をみずみずしく描く話題作、待望の文庫化。



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