#495【経済効率最優先】物語シンガポールの歴史 岩崎育夫 中公新書


物語 シンガポールの歴史 (中公新書)
中央公論新社
岩崎 育夫

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出張でシンガポールに3週間滞在したので、もっとこの国のことを知っておこうと読んだ。

まだ200年弱の国なので、新書一冊で読み切れる。
ただし、特に1965年の独立以降の、リークアンユーの政治についてが、多く書かれている。


一番印象的なのは、単純労働者の家族帯同は不許可ということ。
すなわち、アタマの悪そうな人の子どもは、子どももアタマが悪そうだから、シンガポールには連れてくるな、ということ。
シンガポール人でも、出来の悪い子は、余計な教育は与えない。
経済効率最優先の国。

以下、なるほどと思った点。

⑴ 植民地化
1819年に、ラッフルズがシンガポールに上陸してから、イギリス政府の反対を押し切ってほぼ無人島のシンガポールを植民地化した。
交易拠点としての潜在的可能性に気付いていたため。
ジョホールバルのスルタンにお金を払って、手に入れた。


⑵ 自由貿易港
ラッフルズは、当初から無税で利用できる自由貿易港として、発展した。


⑶ 征服者と被征服者
一般的に、植民地化は征服者と被征服者の間で軋轢が生じるが、シンガポールはほぼ無人島だったため(150人ほど居住者はいた)、その軋轢がなかった。
シンガポールの旧所有者(ジョホールバルのスルタン、非居住)、新所有者、新住民が、シンガポールの植民地化から利益を得て、ウィンウィンウィンの関係だった。


⑷ 分断社会
イギリス植民地時代(1819〜1941年)は、全住民を代表するような政府はなく、中国系、マレー系、インド系が独自に生活を営んでいた。
その方が、イギリスとしては統治に都合がよかった。


⑸ 日本の植民地化
1942年に日本が植民地化し、昭南島となった。
実は、真珠湾の奇襲の一時間前に、日本軍がタイ南部のパタニ、マレーシア北東部のコタバルに上陸、シンガポールの空港に空爆をしていた。
日本にとって、マレーシアやインドネシアの資源を狙うにあたり、シンガポールのイギリス軍の存在が邪魔になっていたため、シンガポールを占領した。
マレー半島上陸から約二ヶ月で、イギリスは無条件降伏をした。


⑹ 中国人粛清
日本軍は、反日主義者や共産主義者と思われる者は、トラックで連行し、セントーサ島やシンガポール東海岸に大きな穴を掘り、機関銃で銃殺した。五千人から五万人が虐殺されたとされている。


⑺ 日本軍の統治
中国人は容赦なく弾圧する恐怖政治、マレー系、インド系は優遇し、日本軍は欧米からの解放者、というふたつの顔をした。


⑻ 人民行動党の政治家
リークアンユー率いる人民行動党は、野党を抑圧していて、政府を厳しく追求する野党政治家には、名誉毀損等を理由に訴訟をおこし、合法的に排除をしている。
弁護士出身のリークアンユーの、得意な手法。


⑼ 野党不要
リークアンユーは、民主国家としての形式を満たすために選挙をするが、政府の政策運営を批判する野党は、国会に不要と考えている。


⑽ 教育制度
教育制度の主眼が、成績優秀者と出来の悪い生徒を選別して、優秀者にエリート教育を施して、官僚にすることに置かれている。
小学校から選別試験があり、その時に成績が悪かったものには敗者復活戦はなく、大器晩成型の生徒が上級学校に進める余地もない。
出来の悪い生徒には、教育は無駄という効率主義。


(11) 金融センター
シンガポールが金融センターとなった要因は、
効率的な行政
よく整備された通信インフラ
イギリスの法制度がビジネス取引の標準なこと、
多くの国民が英語を話せること、
ロンドンとニューヨークの中間に位置し、24時間取引が可能なこと。


(12) カジノ
反対論があったが、カジノを作らなければ、観光客が近隣諸国に奪われ、経済的損失が大きい。
リークアンユーの考えに、生き残るためには悪魔と貿易してでも経済発展しなければならない、というものがあり、道徳的是非よりも、生存のためにはあらゆる産業に参入して、経済発展しなければならない、という命題を優先した。


(13) イギリスに対する感謝の念
イギリスに植民地化されたことで、シンガポールが世界史に登場し、今日の発展が可能となった。


(14) 国是
経済発展が最大の国家目標。
たいていは民族の歴史や文化や言語や宗教が、国民的価値となっているが、シンガポールにはそれはなく、生存のための経済発展に主眼をおく。


(15) 外国人労働者
建設業、メイドなどの月収が低い未熟練労働者は、家族同伴を認めず、メイドは半年ごとに妊娠検査が義務付けられている。
彼らの定住で、シンガポールの知的水準が低下することを懸念しているため、彼らを厳しく管理している。


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